シリーズ「もののあはれ」
「もののあはれ」は日本人の自然観や人生観を象徴する、美意識の核となる言葉。
物事に触れ、言葉になる前の心の揺れを、得も言われぬ妙味を湛えた長期熟成のシングルカスクウイスキーで描き出す。
【本作、葭始生の掛け軸】
ARTIST:ASUKA IRIE/入江 明日香
内燃する生命の爪牙
セレクトしたのは28年の熟成を経たグレントファース。
スペイサイドの歴史ある蒸溜所で、比較的穏やかな酒質を持つが、今回は、原酒そのものが内包する赫然たる個性に着目した。
グラスに注いだ瞬間、濃密な果実の香気が艶やかに立ちのぽり、やがて咆哮のごとき熱を帯びて口中を満たしていく。
芽吹きのようなみずみずしさ、老木のごとき奥深さが交差するその味わいは、生命の力強さと儚さを映現する。
鮮烈な琥珀の雫は、飲む者の彼我の境に、静かに爪を立てる。
◆商品情報
地域:スぺイサイド
容量:700ml
度数:53.7%
蒸留年:1996年
瓶詰年:2024年
熟成年:28年
販売総本数:175本
アーティスト:入江 明日香
輸入メーカー:ジャパンインポートシステム
◆テイスティングノート
白桃とビワの花、花梨の香り。どこか和風な雰囲気を帯びる。
白ブドウの柔らかな甘み。ワクシーなオールド感と深いダージリン茶葉。森の中に差し込む陽光のような懐かしさがある。口に含むと、張りのある様々な果実が縦方向に伸身していく。
黒スグリの酸味、タンジェリンやパパイヤの濃密な味わい。後半はコクのある蓬莱柿、アフォガードの冷たい苦味と林檎の蜜が喉を濡らし、淡い緑の余韻で幕を閉じる。
ボディは厚く、芯が通っており、散ることを知りながらも咲く花のように、儚くも力強い。